ドローンを飛行させる上で気になることは、墜落・事故のリスクです。ドローンの墜落・事故の場合、人的にも物的にも被害をもたらす可能性があります。
ドローン利用者による安全管理の徹底はもちろんのこと、誤操作や障害が発生した場合、常に安全側に動作するように働くフェールセーフ機能がドローンに備わっていたとしても、油断は禁物です。人間の操作ミス(ヒューマンエラー)を完全になくすことはできないですし、絶対に壊れない機械もありません。
そのため、墜落・事故の発生原因、未然に防ぐための対策、墜落・事故発生時の対応として、大事なポイントを解説します。
無人航空機に関する事故・重大インシデントが発生した場合、航空法にて「事故等の報告」と「負傷者救護義務」が定められています。ただちに飛行を中止し、負傷者を救護すると共に、状況詳細を速やかに国土交通大臣に報告する必要があります。
この制度は安全向上を目的としています。ドローンの墜落・事故について知識を深められるように、ドローン事故の現状について紹介します。
出典:国土交通省
無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務
https://www.mlit.go.jp/koku/accident_report.html
無人航空機 無人航空機レベル4飛行ポータルサイト
https://www.mlit.go.jp/koku/level4/operation/index.html
国土交通省の公表によると、令和5年度の事故において、農薬散布関係が約8割となっています。 電柱・電線・道路標識への接触等による物件の損壊が多数発生しています。
操縦者(オペレーター)と補助者(ナビゲーター)のコミュニケーション不足や、散布エリア内とその周辺の障害物の事前確認不足などが主な理由です。
出典:国土交通省 無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務
https://www.mlit.go.jp/koku/accident_report.html
農林水産省では、これまでに発生した事故原因をふまえ、無人航空機による農薬の空中散布における安全対策について、以下のポイントを掲げています。
1.操縦者と補助者の連携強化
空中散布の実施中において、補助者は迅速かつ正確に障害物等に関する情報を操縦者に伝達すること。また、操縦者は補助者からの指示の確認を毎回行うこと。
2.事前確認の徹底
操縦者及び補助者(遠隔操縦機を利用する場合)は、空中散布の実施前に共同で実地確認を実施し、危険箇所等の情報を確実に把握し、互いに共有すること。
3.無人マルチローターを用いた空中散布に係る安全対策の徹底について
無人マルチローターを用いた空中散布は、機体の機能・性能を良く理解し、適切に実施すること。
4.適切な飛行方法での飛行
架線付近での飛行など危険な飛行を行わないこと。また、隣接していないほ場や、飛行経路上に家屋、架線等があるほ場へ移動させる場合は、機体を着陸させ、陸上で運搬すること。
5.農薬飛散の防止
空中散布の実施前には、実施区域及びその周辺に学校、病院等の公共施設、家屋、養蜂の巣箱、有機農業が行われているほ場等がある場合には、居住者等に対し、農薬を散布しようとする日時、農薬使用の目的、使用農薬の種類及び実施主体の連絡先についての情報提供を徹底すること。また、実施中は実施区域内及び周辺に人が立ち入らないよう常に注意すること。
詳細は、農林水産省のホームページを確認しましょう。
出典:農林水産省 無人航空機による農薬の空中散布における安全対策について
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_kouku_zigyo/mizin_tuuti/
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_kouku_zigyo/mizin_tuuti/attach/pdf/mujinkoukuki_anzentaisaku_tsuuchi.pdf
安全対策を徹底できるように、ドローンを操作する際の心構え・とるべき行動をわかりやすく解説していきます。
一般的な農業用ドローンの場合、操縦者(オペレーター)は補助者(ナビゲーター)とバディを組んでドローンを飛行させます。お互いの位置の確認、散布方法・散布経路の確認、連絡方法・手段を事前に確認しましょう。連携をはかり、安全な散布体制を構築することが重要です。
また最近では、国土交通省が公開する「航空局標準マニュアル(空中散布)」を遵守し、ひとりで飛ばせる自動飛行ドローンも登場しています。ですが、人間も機械にも絶対はありません。ドローンによる散布は作業の労力を削減し効率化をはかることができますが、効率化と同時に安全体制の徹底を忘れないようにしましょう。
参考:国土交通省
無人航空機の飛行許可・承認手続
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000042.html#anc03
航空局標準マニュアル(空中散布)
https://www.mlit.go.jp/common/001521379.pdf
事前確認不足を主要因とする事故が、例年、事故件数の多くを占めています。散布エリア内、その周辺における電柱・電線・標識・家屋・道路などの障害物を事前確認し、留意する必要があります。
たとえ普段から行き慣れている圃場であったとしても、いつの間にか木が生い茂り、散布エリア内に枝葉が飛び出していることもあります。その枝葉にプロペラが接触すると、高速回転しているプロペラが枝葉を巻き込み、バランスを崩して墜落・事故の原因につながる可能性があります。
散布時には周りを確認し、飛行エリア・コースのを確かめた上で飛行させましょう。
操縦者(オペレーター)のスキル不足により、事故を起こしてしまう場合があります。ドローン初心者が操縦ミスをするケースはよくあります。操縦をしながら他のことに気をとられてしまい、注意散漫となり操縦を誤ってしまうケースもあります。
またドローンは精密機械なので、メンテナンスを怠ると墜落や事故リスクが高まります。飛行前の点検、飛行後の清掃・整備は欠かせません。異常がないか、ドローンを飛行する前に必ず確認しましょう。
飛行の仕組み、飛行操作、ドローンの取扱方法を学び、安全な飛行をしていきましょう。
スピードを出しすぎて障害物にに激突したり、障害物に接近しすぎて接触してしまう場合もあります。ドローンはスピードを出してしまうと、急に止まれません。無理な飛行はやめましょう。
飛行中のドローンと周りを目視しながら、「過度なスピードをださない」「過度な接近はしない」ことを心がけてください。
農薬飛散による被害を防ぐため、事前の周知や散布直前の周辺の確認に加え、散布中も周辺への配慮が必要です。特に、急な天候の変化に十分注意してください。
ドローンは風の影響を受けやすく、突風により流されて衝突したり、多方向からの風でバランスを崩してしまうことがあります。つまり、農薬が飛散(ドリフト)する可能性があるということでもあります。特に春・秋のような突風が多い季節は、注意が必要です。少しでも不安を感じたら飛行を中止しましょう。
安全対策を徹底していても、不慮の事故が起きてしまう可能性はあります。農業用ドローンを飛行させるためには、国土交通省が定める「運行ルール」を遵守する必要があります。万が一、墜落・事故が発生してしまった場合でも、冷静に行動できるように、対応方法を説明します。
参考:
国土交通省 無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務
https://www.mlit.go.jp/koku/accident_report.html
無人航空機レベル4飛行ポータルサイト 運行ルール
https://www.mlit.go.jp/koku/level4/operation/
ドローン事故によって負傷者がでてしまった場合は、最優先するべきことは負傷者の救護です。国土交通省「運航ルール」でも、負傷者発生時の救護は義務付けられています。
直ちにドローンの飛行を中止し、負傷者を安全な場所に移動させ、救護を行います。負傷レベルによって「救急車を呼ぶ」「応急救護処置を行う」などの対応を行います。止血・心臓マッサージ・人工呼吸など、応急処置の基本は身に付けておきたいですね。
二次被害を起こさないように、現場周囲の安全を確保することも大切です。
例えば、破損したドローンのプロペラが回り続けていたり、道路などにドローンが墜落したりすると、第三者への被害拡大の可能性があります。そのため、ドローンの電源を落としバッテリーも取り外しましょう。事故によりドローンの破片が散乱している場合は、周辺への立ち入り制限をするなど、安全確保を徹底します。
状況に応じ、危険や被害の拡大を防ぐため、消防や警察への連絡を行いましょう。
火災が発生している場合には速やかに消防への連絡・消火活動、警察官への事故の概要の報告などを行ってください。
現場の状況、ドローンの破損状態、事故により破損させてしまった物の状態など、事故の証拠となる写真や動画を撮影しておきましょう。
特に、事故発生時は動揺して記憶が曖昧になることもあるので、事故の証拠写真や動画は、事故報告や保険請求にも非常に役立ちます。
無人航空機に関する事故や重大インシデントに該当しそうな事案が発生した場合、日時・場所・概要などの事故・重大インシデントの報告を国土交通大臣に行います。国土交通省が定めている事故・重要インシデントは以下となります。報告は、DIPS(ドローン情報基盤システム2.0)で行います。
抜粋:国土交通省 無人航空機の事故等の報告及び負傷者救護義務https://www.mlit.go.jp/koku/accident_report.html
さらに、農薬散布中の農薬飛散・農薬流出などの農薬による事故については、実施区域が所在する都道府県農薬指導部局まで事故報告書を提出する必要があるので、覚えておきましょう。
農業用ドローンには、手動・半自動・自動と種類があります。
手動ドローンは操縦者(オペレーター)の意思で制御できることがメリットですが、経験や技術が必要になってきます。また半自動ドローンも一部が自動飛行、一部が操作が必要になるため、やはり人間の判断に頼ることになります。そのため、安全に飛行させるために、操縦者(オペレーター)は補助者(ナビゲーター)とバディを組んでドローンを飛行させます。
一方で自動飛行ドローンは、離陸・散布・着陸まで全て自動なので、事故につながりにくいメリットがあります。ここでは、自動飛行ドローンが事故につながりにくい理由を解説します。
関連記事はこちら▶️自動飛行ドローンのメリット3選|手動と半自動との違いも
自動飛行ドローンは高精度な測位技術により、あらかじめ設定した圃場の飛行ルートに沿ってドローンが自動で飛び、農薬・肥料を散布します。飛行中のドローンの高度維持や姿勢制御などは精密に自動化され、農薬・肥料の吐出量も正確に圃場全体に散布します。
そのため、高い集中力を要求される手動・半自動ドローンと比べると、自動だからこそ精神的な負担を軽減することができます。操作ミス(ヒューマンエラー)を未然に防ぐことができます。
自動飛行ドローンの操作はシンプルで簡単なので、手動・半自動のような熟練の経験や技術は必要ありません。農業やドローンの経験・年齢・性別などに関係なく、機械音痴の方でも、誰もが散布のエキスパートになれることが魅力です。
ですが、自動飛行ドローンを飛行させる上での法令、自動飛行の仕組み、操作方法、メンテナンスなどは理解する必要があります。導入するドローンメーカーが開催する講習会に参加し、知識・技術習得をしましょう。
自動飛行ドローンにご興味ある方は、まずはナイルワークスまで気軽にお問い合わせください。
ナイルワークスのドローンは、人手不足や高齢化といった農業の課題に真摯に向き合い、開発された製品です。効率的で持続可能な農業を目指す方々にとって、最適な解決方法となるでしょう。
Nile-JZシリーズの主な特徴は以下の通りです。
農業用ドローンの導入やその他の疑問点については、ぜひナイルワークスまでお気軽にご相談ください。専門スタッフが丁寧にサポートいたします。