受け継ぎたいものがここにあるから。 静かな想いが突き動かすこと。

農業用ドローン

トータスファーム
相原美穂 様
地域:宮城県仙台市 作物:とうもろこし・水稲 作業:防除

江戸時代から10 代以上続く農家に生まれた相原さん。北海道の農業系大学で学びながら農業バイトをするうちに、北海道で生産されている農産物のほとんどが道内で消費されずに本州に出荷されていることを知り、農産物の流通に興味を持ちました。卒業後、仙台卸売市場内の青果部に勤務していました。東日本大震災がきっかけで、若い人や大変だった農家さんの力になりたいと考え耕作放棄地畑を借り、2015年から露地野菜を経営しています。

相原さん「仙台は消費と生産地がとても近いのが特徴です。鮮度を生かした農産物を提供したくて、夏はとうもろこしを、冬場はブロッコリーを生産しています。このあたりは津波を被っている土地なので、基盤整理のために山砂が盛られているので、地力を高めるためにもとうもろこしの残渣まで活用しています。」

工夫とひらめきと。持続的な農業に向けた試行錯誤からの挑戦。

ドローンを飛ばす様子※撮影上の演出のためヘルメットを被っていません

作付面積1haのうち50aでとうもろこしとブロッコリーの二毛作に取り組みながら、長期間出荷できるように畑を7箇所に分けて時期をずらして播種・育成しています。相原さんの朝獲りとうもろこしはリピーターが多数で瞬く間に売り切れてしまうほど人気。糖度が18度以上、1本400グラムの甘くて大振りなとうもろこしが特徴です。もちろん、このとうもろこしを安定的に生産できるようになるには数多くの試行錯誤がありました。

相原さん「とうもろこしのアワノメイガ防除の際に、上から確実に、かつ均一に散布することができればよいのではないか、と思い、3年前にナイルワークスに話を聞きに行きました。セット動噴で散布していると、背の高いとうもろこしの穂に農薬をかける際に自分自身が農薬を全身で浴びてしまうことと、機材自体が重たいので作業している途中で腕が重くなり上部まで均一に散布できていないこと、そしてセット噴霧の場合、誰かとペアになって散布するので、スケジュール調整が大変でした。(Nile-JZ Plusは)実際、女性でも1人で扱える軽さと、軽バン(ミニバン)に積めること、なによりも自動飛行経路を作ってくれるので簡単なんです。さらに、身構えることなく、ひとりでもやりたい時間帯に気軽に防除できることは精神的にも本当に楽です。」

想いをつなげること。次の世代に遺したいもの。

上空からの風景



ちょうど取材時は、苗が活着した田んぼに緑の絨毯が広がり、その隣では収穫間近の麦が太陽を浴びて黄金色にキラキラ輝いていました。目の前のとうもろこしが風にたなびき、葉がこすれあう音が心地よく、仙台駅から車で20分の近距離にこんなに雄大な生産地が広がるとは驚きです。商業地と生産地が近いことも仙台ならではの特徴で、野菜の鮮度にとっては重要なことです。

相原さん「自分が小さい頃は季節を感じながら、ザリガニを獲りに行ったり、カエルを見に行くことが生活の中にありました。そういった原風景をどこかに遺しておきたいと感じて、その一つの手段として農業を選択しています。地域の祭事や文化が農業と深く関わっており、仙台で、まだまだ良いモノを自分が受け継いで次につなげたいと思っています。農業と食を通して地域が豊かになってくれれば良いなあと願っています。」

次世代育成も対話から。

飛行中の農業用ドローン繁忙期でも専門学生の農業実習を週2回引き受けています。農業との両立は簡単ではないことですが、農作物を通して感じることや気づきを言葉で表現することと対話に重点を置いています。

相原さん「生徒たちがイキイキしていることが純粋に楽しいのと、“受け継ぎたいものがここにある”ことを感じてくれていると思うと、達成感があります。誰かが一緒にやらないと次の世代に農業は残らないし、新しいことにも繋がらないですしね。仙台から若い人たちが農業に戻ってきて、私の受け継ぎたいものをひとつでも受け継いでくれたら嬉しいと思いながらやっています。」

仙台発、未来へ

たくさんのとうもろこし土地や自然との関係を見直し、地域の未来について考えることはできたとしても、実際の行動に移すことは本当に難しいこと。農作物だけでなく、人々の生活スタイルをデザインするような活動を続ける相原さん。農業、次世代育成、ビジネスそれぞれの枠にとらわれない姿は、様々な年代や趣味嗜好の人々にも共感を得続けることでしょう。

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